次の日、清美は初めて、姿ハルという人に会う。
洋服の差出人の名前でした。 あのやさしい叔母、沙織のことを聞く。
「沙織さんのような人は、本当にこの世に二人とはおりませんよ。
あんなに美しい人でしたから、縁談は降るようにありました。
それどころか、沙織さんには心から好きな人もいたのです。
その好きな人をさえもあきらめた沙織さん。周りの人も心を痛めました」。
姿ハルは清美の母に、「沙織さんは何と言ったと思います? わたしは、兄の罪を万分の一でも償いたいの。 わたしが独身で通すことで、あなたと清美ちゃんにお詫びをしたいの。 そんなことでお詫びになるとは思えないけれど、わたしは、そう、神様の前で誓ったのって、涙をこぼされました」。
姿ハルは泣いていました。
自分の兄が妻のある身で、他の女性に子どもを産ませた罪を、兄に代わって自分が背負おうとした清美の叔母、沙織。
初めて叔母とも知らずに会った、あの祭りの日、家の近くの草原に、ひとりぼっちで遊んでいた幼い清美を連れて行き、 ひしと抱きしめて、ほろほろと涙をこぼした叔母は、どんな思いで抱きしめたのか、涙をこぼしたのか、 それは深い愛であったことが、清美にもよくわかりました。
『あなたのお父さんをゆるしてね』。
ざんげの思いがこもった愛だったことも。
そして、清美への何よりの贈物は、素晴らしい神の愛を伝えることだと、叔母は思ったにちがいない。
それが、あの歌であったのだ、と。
アルバムのぺージは移ります。
一方では、清美の高校生としての生活では、あの章との爽やかな関係が続いている様子が収まっています。
同じ一年生で、同じ美術部にいて清美を慕っている野理子がいる。素直な明るい子で、苗字は加奈崎といぅ。
その父は加奈崎盛夫。
野理子の父こそ、清美の小学生の頃、母のもとによく通っていて、一時は父と呼ばされ、清美は父のいない淋しさから、よく甘えていた。
やさしいところがあったが、ある夜、清美の母のいない夜に来て、生涯、清美が拭い去ることのできない行為で、心に大きな傷を残した張本人でした。
さすがにそのことは章にも言いだせない。 いつか復讐しようとしている。当然ではないか、と。
ある日、清美は野理子の誕生パーティに招かれます。
野理子の兄と友人関係の章も来るということでした。 (あの加奈崎も一緒なのか)