雪のアルバム(8)

三浦綾子の作品『雪のアルバム』
芦屋、神戸三浦綾子読書会
編集者 森下 辰衛先生
国立山口大文学部・同大大学院・九州女学院大助教授で、北海道・旭川に居を構えて、三浦 綾子記念館・特別研究員・三浦綾子読書会監修者です。
著作権のお許しをいただいております。
私(三浦)に、いかようにもお使いください。
三浦 綾子の名前だけ出してくださいでした。

『重荷を共に負おう』。と言ってくれる人がいる。
清美には大きな慰めであり、強力な励ましとなったのです。
アルバムのページはまだ続いています。
清美はケガをしてしまい、病院に運ばれ、それを偶然目撃していた章が入院中の清美を見舞いました。
「じゃあ章さんは私を許してくれていたのね」「許してほしいのは、ぼくの方だよ、お互いの重荷を負い合う相手は、ぼくにとって清美ちゃんなんだ」。
清美もこの言葉に励まされて生きてきたと打ち明けると、章は、「自分は教会に行っていて、キリストから赦しを受けている、赦された自分が、どうして人を責めつづけることができるだろうか」。と言う。
二月半ばの寒い雪の日、清美と章は喫茶店で、温かいコーヒーを飲んでいます。
世の中は寒くても、体の中に熱いものが流れ込んできています。
清美は今までの自分の感情を全てあきらに話します。
章にもらった聖書を読み続け、神の愛が解ってきながら、それでも、こんな自分が、神に受け入れられるかと悩んでいることも。
章は言う、
「そうした、どうにもならない人間の存在のために、キリストがその罪を背負って、代わりに死んでくださったのだよ」。
清美は(そのままでいいのだよ)という、あたたかい神の声を、この寒い雪の日に聞き、神の救いを信じたのです。
その夜、清美は夢を見ました。あの、叔母の沙織が、きれいな花園でひとり、歌を歌っている夢でした。
果てしなく続く美しい花畑に、歌声が流れます。

かみさまはのきの子すずめまで。
やさしく いつもまもりたもう。
小さいものをもめぐみたもう。

が思わず駆け寄ろぅとしたとき、叔母の姿は消え、すずめが二羽、眩しい光輝く空に飛んで行きました。
二羽の すずめと輝く光、清純に神の下に生きた沙織が、神様の光の中に清美と章を導いていく姿ではないでしょうか。これは夢でしょぅか。
作者三浦綾子が、作中の二人に贈る祝福のアルバムのーページとも感じます。
この作品のバッググラゥンドには、小さなすずめの存在が流れています。
聖書には『二羽のすずめは一アサリオンで売っている』
と記す。(マタィ十章二十九節)。当時の最少単位の銅貨程度の価値の扱いです。
神様は、とるに足らない扱いのすずめだから、尚さら、優しく愛しておられるのだと、
確信するまでに清美の心は変えられていったのです。

Verified by MonsterInsights